地方公務員の採用倍率は、この10年間でかなり下がっています。
総務省の「地方公共団体の勤務条件等に関する調査」を見ると、地方公務員の競争試験の競争率は、平成27年度の6.6倍から、令和6年度には4.1倍まで低下しました。
しかも、変わっているのは倍率だけではありません。
平成27年度には約53.7万人いた受験者が、令和6年度には約38.9万人まで減っています。
一方で、合格者数は約8.2万人から約9.5万人へ増えています。
受験する人が減っている一方で、合格する人は増えている。
この二つが同時に進んだことで、地方公務員の採用倍率は下がっています。
この記事では、総務省の全国データをもとに、地方公務員の採用環境が過去10年間でどう変わったのかを見ていきます。
あわせて、自治体で約13年間働いた私自身が感じている変化についても書いていきます。
地方公務員試験の受験者は10年間で約15万人減った
まず見てほしいのが、受験者数と合格者数の変化です。
平成27年度の受験者数は536,627人でした。
それが令和6年度には388,996人まで減っています。
10年間で約14万8千人の減少です。割合にすると、約28%減ったことになります。
一方、合格者数は平成27年度の81,920人から、令和6年度には94,999人まで増えています。

グラフを見ると、変化がかなり分かりやすいと思います。
受験者数は、10年間で全体として右肩下がりです。
令和2年度には一時的に増えていますが、その後は再び減少し、令和5年度には40万人を下回りました。
一方、合格者数はしばらく8万人前後で推移したあと、直近では増加しています。
令和6年度には94,999人となり、平成27年度と比べて1万人以上増えました。
つまり、採用倍率が下がっている背景には、単純に「受験者が減った」だけではなく、合格者が増えていることも影響しています。

私が地方公務員試験を受けたときは、受験した区分の倍率が13倍を超えていました。全国平均とは単純比較できませんが、今の数字を見ると採用環境はかなり変わったと感じます。
地方公務員の採用倍率は6.6倍から4.1倍へ低下
受験者が減り、合格者が増えれば、当然ながら競争率も下がります。
地方公務員の競争試験の競争率は、平成27年度の6.6倍から令和6年度には4.1倍まで低下しました。
過去10年間の推移は次のとおりです。
| 年度 | 競争率 |
|---|---|
| 平成27年度 | 6.6倍 |
| 平成28年度 | 6.5倍 |
| 平成29年度 | 6.2倍 |
| 平成30年度 | 5.8倍 |
| 令和元年度 | 5.6倍 |
| 令和2年度 | 5.9倍 |
| 令和3年度 | 5.8倍 |
| 令和4年度 | 5.2倍 |
| 令和5年度 | 4.6倍 |
| 令和6年度 | 4.1倍 |
令和2年度に一度上昇していますが、長期的に見ると低下傾向がはっきりしています。
特に直近では、令和4年度の5.2倍から、令和5年度4.6倍、令和6年度4.1倍と下がっています。

なぜ地方公務員の採用倍率は下がっているのか
ここで気になるのが、なぜ地方公務員を受験する人が減っているのかという点です。
もちろん、原因を一つに絞ることはできません。
背景には、若年人口の減少だけでなく、民間企業との人材獲得競争など、複数の要因があると考えられます。
以前と比べると、働く場所を選ぶ基準も増えました。
給与だけでなく、勤務地、働き方、リモートワークの有無、転職のしやすさ、専門性を身につけられるかなど、仕事選びの基準は多様になっています。
その中で、公務員も「安定しているから自動的に選ばれる仕事」ではなく、多くの仕事の一つとして比較されるようになっているのではないでしょうか。

個人的には、倍率そのものよりも「受験者が約15万人減っている」という点のほうが気になりました。公務員を目指す人そのものが減っていることが数字に表れています。
私が地方公務員試験を受けた頃は13倍を超えていた
私自身が地方公務員試験を受けたのは、今から10年以上前です。
当時、私が受験した区分の倍率は13倍を超えていました。
もちろん、今回紹介している地方公務員全体の全国平均と、私が受験した特定の試験区分の倍率を単純に比較することはできません。
ただ、当時は「公務員は人気がある」「公務員試験は狭き門だ」という感覚が、今よりも強かったように思います。
私自身も、合格するためにかなり試験勉強をしました。
公務員になれば安定して長く働ける。
そう考えて公務員を目指す人も多かった時代だったと思います。
それだけに、現在の全国の競争率が4.1倍まで下がっている数字を見ると、時代が変わったと感じます。
13年間働いて感じた「公務員=楽な仕事」とのギャップ
私はその後、自治体で約13年間働きました。
そこで感じたのは、世間で言われるほど地方公務員は「楽な仕事」ではないということです。
私が働いていた間にも、仕事の進め方はかなり変わりました。
一人当たりが抱える業務は増えました。
メールが普及し、情報のやり取りのスピードも上がりました。
住民から求められる行政サービスも複雑になっています。
さらに自治体では、DX、ペーパーレス化、オンライン手続きなど、新しい仕事も増えています。
もちろん、これは私が自治体で働いて感じたことであり、全国すべての自治体にそのまま当てはまるとは限りません。
ただ、私自身は約13年間働いてみて、「公務員になれば安定していて、仕事もそれほど忙しくない」という昔ながらのイメージと、実際の仕事にはギャップがあると感じました。

「公務員は楽そう」と言われることもありますが、実際に働いていた私はあまりそう感じませんでした。仕事の量もスピードも、昔より増していると感じる場面が多くありました。
倍率4.1倍なら地方公務員になりやすくなったのか
では、地方公務員試験は以前より簡単になったのでしょうか。
ここは注意が必要です。
今回紹介している4.1倍という数字は、地方公共団体の競争試験全体を集計した数字です。
「都道府県庁の大卒行政職が4.1倍」「市役所の行政職が4.1倍」という意味ではありません。
実際の倍率は、自治体や職種、採用区分によって大きく異なります。
行政職なのか技術職なのか。
新卒向けなのか経験者採用なのか。
どの地域の自治体を受けるのか。
こうした条件によって難易度は変わります。
そのため、「全国平均が4.1倍だから簡単に合格できる」わけではありません。
一方で、全国全体として見れば、10年前と比べて競争率が下がっていることは確かです。

倍率だけを見て「公務員試験は簡単になった」と考えるのは少し違うと思います。ただ、受験者が減っている今は、以前より挑戦しやすい採用区分も出てきています。
「選ぶ側」だった自治体も「選ばれる側」になっている
今回の数字を見て、私が特に興味深いと感じたのは、採用倍率そのものよりも受験者数の減少です。
平成27年度の約53.7万人から、令和6年度には約38.9万人。
10年間で約15万人も減っています。
これまで公務員採用というと、「多くの受験者の中から自治体が人材を選ぶ」というイメージが強かったと思います。
しかし、受験者が減り続ければ、自治体側も応募してもらうための工夫が必要になります。
SPIなどを利用した採用試験、民間企業と併願しやすい試験日程、社会人経験者向け採用など、従来の公務員試験とは異なる採用方法を取り入れる自治体もあります。
今後は「公務員だから応募者が自然に集まる」という前提そのものが変わっていく可能性があります。
自治体が人を選ぶだけではなく、働く側から自治体も選ばれる。
そんな採用環境に変わりつつあるのかもしれません。

自治体で働いていた頃は「採用する側」が応募者を選ぶイメージが強くありました。これからは自治体自身も、働く場所として選んでもらう努力が必要になると思います。
まとめ|地方公務員の採用環境は10年間で大きく変わった
過去10年間の地方公務員採用試験を見ると、採用環境が大きく変化していることが分かります。
- 受験者数は536,627人から388,996人へ減少
- 合格者数は81,920人から94,999人へ増加
- 競争率は6.6倍から4.1倍へ低下
数字だけを見れば、地方公務員採用試験の競争は以前より緩やかになっています。
ただし、これは地方公務員の競争試験全体をまとめた数字です。
自治体や職種、採用区分によって倍率は大きく異なります。
そして、私自身が自治体で約13年間働いた経験から感じるのは、公務員という仕事そのものも変わっているということです。
仕事量が増え、仕事のスピードも上がりました。
一方で、民間企業との人材獲得競争も激しくなっています。
これからは「安定しているから公務員を選ぶ」というだけではなく、
どこで、どんな仕事をして、どんな生活を送りたいのか。
そうした基準で、公務員も一つの仕事として選ばれる時代になっていくのではないかと思います。
地方公務員の採用倍率の低下は、単なる試験難易度の変化ではなく、公務員という仕事を取り巻く環境の変化を表す数字の一つなのかもしれません。
参考資料
本記事の数値は、総務省「地方公共団体の勤務条件等に関する調査」の「16-1 競争試験の実施状況(全体)」をもとにしています。
政府統計の総合窓口 e-Stat「競争試験の実施状況(全体)」
※本記事で紹介している競争率は地方公共団体全体の競争試験を集計した数値であり、特定の自治体や大卒行政職のみの倍率を示すものではありません。


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