公務員から民間企業へ転職するとき、面接でよく聞かれたのが「なぜ公務員を辞めるのですか?」という質問でした。
私の場合、本音を言えば自治体の仕事の進め方に不満がありました。
ただし、その不満を面接でそのまま話すことはしませんでした。
面接では、民間企業への出向を経験したことで自分の価値観が変わり、今後は民間企業で新しいことに挑戦したいと考えるようになった、と説明していました。
この記事では、公務員から民間企業へ転職した私が、実際にどのような転職理由を面接で話していたのかを紹介します。
あわせて、面接では話さなかった本音の転職理由についても書きます。

転職理由は「本音を全部話すこと」よりも、「本音を相手に伝わる形に整理すること」が大切だと感じました。
公務員の転職理由は面接でよく聞かれた
私は30代で自治体から民間企業への転職活動をしました。
面接では、かなりの確率で転職理由を聞かれました。
公務員は一般的に安定した仕事というイメージがあります。
そのため、面接官からすると「なぜ安定した公務員を辞めるのか」は気になるポイントだったのだと思います。
特に私の場合は、長く自治体で働いていました。
そのため、「なぜ今になって民間企業に転職しようと思ったのですか?」と聞かれることもありました。
ここで自治体への不満をそのまま話してしまうと、単に「今の職場が嫌だから転職したい人」に見えてしまう可能性があります。
そこで私は、転職理由をできるだけ前向きに整理して話すようにしていました。
私が面接で実際に話していた転職理由
私が面接で話していた転職理由は、大きくまとめると次のような内容です。
民間企業への出向を経験し、自治体とは異なる仕事の進め方を知りました。
その経験を通じて、よりスピード感を持って新しいことに挑戦できる環境に魅力を感じるようになりました。
また、デジタル分野の仕事を経験する中で、この分野を今後のキャリアの軸にしたいと考えるようになりました。
そのため、これまでの経験を生かしながら、民間企業でさらに経験を積みたいと考え、転職活動を始めました。
もちろん、面接ごとに応募先の仕事内容に合わせて内容は少し変えていました。
DXやITに関係する求人であれば、これまで経験してきたデジタル分野の仕事を今後のキャリアの軸にしたいことを厚めに話しました。
重要なのは、「公務員を辞めたい理由」だけで話を終わらせないことです。
なぜ転職したいのか。
転職して何をしたいのか。
そして、なぜその会社なのか。
ここまでつなげて話すようにしていました。

「公務員が嫌だから辞めます」ではなく、「この経験をきっかけに、次はこういう仕事をしたい」と話すようにしていました。
本音では自治体の仕事の進め方に不満があった
一方で、転職を考えるようになった本音の理由はもう少し複雑でした。
私は民間企業への出向を終えたあと、自治体に帰任しました。
帰任後、以前よりも自治体の仕事の進め方に強い違和感を覚えるようになりました。
ただし、自治体の仕事の進め方が出向している間に急に変わったわけではありません。
変わったのは、むしろ自分のほうでした。
民間企業への出向で「自分の当たり前」が変わった
民間企業への出向で外の世界を知ったことで、仕事に対する私自身の価値観が大きく変わりました。
出向前は、自治体の仕事の進め方を「こういうものだ」と思っていました。
他の組織で働いた経験がなかったので、それが普通だと思っていたのです。
ところが、民間企業で働いてみると、仕事の進め方はかなり違いました。
コミュニケーションの取り方。
スケジュールの調整方法。
会議の進め方。
意思決定のスピード。
新しいことに挑戦するときの考え方。
さまざまな部分で違いを感じました。
そして自治体に戻ったとき、それまで当たり前だと思っていたことに違和感を持つようになりました。
自治体が変わったのではなく、外の世界を知ったことで自分の基準が変わったのだと思います。

出向前の自分なら気にしていなかったことが、帰任後はストレスになりました。「自治体の当たり前は、外の世界の当たり前ではない」と知ったからです。
帰任後に感じた具体的な違和感
帰任後、特に気になったのは次のような点です。
- 事業の目的より、上司や首長、議会への配慮が優先されることがある
- 役職が低いと意見を言いにくい雰囲気がある
- 成功したことより、失敗しなかったことが評価されやすい
- 失敗を恐れて新しいことに挑戦しにくい
- チャットより対面や電話のほうが丁寧という風潮がある
- スケジューラーが十分に機能していない
- 会議の開始時間や終了時間が曖昧になりやすい
- 上司の予定が空いていても、事前に了承を得てからでないと予定を入れにくい
- 在宅勤務やオンライン会議を使いにくい雰囲気がある
もちろん、これは私が働いた職場で感じたことです。
すべての自治体や部署が同じだとは思っていません。
それでも、出向前と帰任後では、同じような仕事の進め方に対する私自身の受け止め方がかなり変わりました。
仕事の目的より組織内の事情が優先されることに違和感があった
特に気になったのは、議論の進め方です。
私は、「この事業は何のためにやるのか」「住民にとってどのような効果があるのか」といった目的を中心に議論したいと考えるようになっていました。
しかし実際には、
「○○部長がこう言っているから」
「首長がこう考えているから気を使わなければいけない」
「議会で聞かれたときに困るから、この事業はやっておいたほうがいい」
といった組織内の事情が強く意識される場面がありました。
もちろん、自治体の仕事で首長や議会との調整は欠かせません。
それ自体がおかしいとは思いません。
ただ、出向後の私は、以前よりも「そもそも何のためにやるのか」を重視するようになっていました。
そのため、仕事の目的よりも周囲への配慮が先に出てくる場面に、強い違和感を覚えるようになりました。
失敗しないことが重視される環境にも違和感があった
もう一つ大きかったのが、失敗に対する考え方です。
自治体では、成功して大きな成果を出すことよりも、失敗しないことが重視されているように感じる場面がありました。
失敗すると説明責任が生じます。
そのため、確実にできることを選びやすくなります。
結果として、新しいことに挑戦するハードルも上がります。
私は出向を経験したことで、失敗のリスクを考えつつも、まず小さく試して改善するという仕事の進め方にも魅力を感じるようになっていました。
そのため、この点でも価値観のズレを感じました。
スケジュール調整一つでも「当たり前」が違った
価値観の違いを特に実感したのが、スケジュール調整です。
出向先では、スケジューラーを見て上司の予定が空いていれば、その時間に打ち合わせを設定することができました。
「この時間に予定を入れてもよろしいでしょうか」と、毎回事前にお伺いを立てる必要はありませんでした。
一方、自治体に帰任すると、上司のスケジュールが空いていても、まず本人に確認してから予定を入れるという進め方でした。
出向前の私は、これを当然だと思っていました。
上司の予定なのだから、事前に了承を得るのが丁寧だと思っていたからです。
しかし、一度別のやり方を経験すると考え方が変わりました。
「スケジューラーが空いているのであれば、そこに予定を入れられるからこそスケジューラーなのではないか」と思うようになりました。
一回一回は小さなやり取りです。
しかし、日程調整のたびにお伺いを立てると、その分だけ仕事は止まります。
出向する前は気にしていなかったことが、帰任後はストレスになりました。
これも、外の世界を知ったことで自分の当たり前が変わった例だと思います。
DXの部署でも仕事の進め方はかなりアナログだった
私が帰任したのは、デジタル化を推進する部署でした。
それでも、仕事の進め方にはかなりアナログな部分が残っていました。
Microsoft 365(M365)やGoogle Workspaceなどのツールは導入されていました。
しかし、チャットをすると嫌がられたり、上司への連絡は対面や電話のほうが丁寧だと考えられていたりしました。
オンライン会議を設定しても、職場にいる人がオンライン会議室に入ってこないこともありました。
在宅勤務をしようとすると、あまり歓迎されていないと感じることもありました。
スケジューラーも導入されていましたが、予定が空いているからといって、その時間にそのまま打ち合わせを設定できるわけではありませんでした。
この経験から、私はDXについて一つ強く感じたことがあります。
ツールを導入するだけでは、DXにはならないということです。
M365やGoogle Workspaceを導入しても、仕事の進め方や組織文化が変わらなければ、トランスフォーメーションにはなりません。
むしろ、便利なツールを入れたのに従来と同じ仕事の進め方を続ければ、ツールの良さも十分に生かせません。
デジタル化を推進する部署にいたからこそ、このギャップは強く感じました。

M365やGoogle Workspaceを導入しても、働き方が変わらなければDXにはならない。帰任後はこの点を強く感じました。
転職エージェントには本音を話していた
こうした不満を、企業の面接でそのまま話すことはしませんでした。
ただし、転職エージェントにはかなり率直に話していました。
転職エージェントには、自分が何を嫌だと感じているのかを知ってもらったほうがいいと考えたからです。
たとえば、せっかく転職したのに、前職と同じような組織文化の会社に入ってしまえば意味がありません。
仕事内容だけではなく、働き方や組織文化も含めて、自分に合う求人を紹介してもらう必要があります。
そのため、エージェントとの面談では、自治体で感じていた不満も比較的そのまま話していました。
一方、企業面接では伝え方を変えました。
面接では「何が嫌か」ではなく「これから何をしたいか」を話した
自治体への不満をそのまま面接で話してしまうと、面接官にはネガティブに受け取られる可能性があります。
たとえば、
「上司にいちいち確認するのが嫌でした」
「会議が時間通りに終わらなくて嫌でした」
「在宅勤務を嫌がる職場だったので辞めたいです」
と話しても、採用する側にはあまり良い印象を与えないと思います。
そこで私は、「何が嫌だったのか」ではなく、「その経験によって何をしたいと思うようになったのか」に変換していました。
たとえば、仕事の進め方への不満があったのであれば、
民間企業への出向を経験し、さまざまな仕事の進め方があることを知りました。
その経験を通じて、自分もよりスピード感を持って新しいことに挑戦できる環境で働きたいと考えるようになりました。
と話します。
自治体と価値観が合わなくなったという本音を完全に隠しているわけではありません。
同じ出来事を、相手に伝わりやすい形に整理しているだけです。
私はこの考え方で転職理由を組み立てていました。

本音と面接用の転職理由は、まったく別物ではありません。「不満」を「次に求める環境」に言い換えるイメージです。
転職理由と志望動機はつなげて話した
もう一つ意識していたのが、転職理由と志望動機をつなげることです。
「民間企業で働きたいです」だけでは、どの会社でもいいことになってしまいます。
そこで、私は応募するポジションに合わせて話す内容を変えていました。
たとえば、デジタル分野の求人であれば、
- 民間企業への出向を通じて仕事に対する価値観が変わった
- 民間企業でより新しいことに挑戦したいと考えた
- これまでデジタル分野の仕事を経験してきた
- 今後もデジタル分野をキャリアの軸にしたい
- その経験を応募先の仕事で生かしたい
という流れで話しました。
これなら、転職理由と志望動機が一つのストーリーになります。
公務員への不満を無理に消す必要はない
公務員から転職したい人の中には、今の職場に不満を持っている人も多いと思います。
私は、不満を持つこと自体が悪いとは思いません。
実際、私も不満がありました。
むしろ、「何が嫌なのか」を整理すると、自分が次の職場に何を求めているのかが分かります。
たとえば、
「意見を言いにくいのが嫌だ」のであれば、次の職場では役職に関係なく意見交換できる環境を重視する。
「失敗を恐れて挑戦できないのが嫌だ」のであれば、挑戦を評価してくれる会社を探す。
「非効率な仕事の進め方が嫌だ」のであれば、働き方やITツールの活用状況を確認する。
不満は、転職先を選ぶためのヒントにもなります。
ただし、面接では不満をそのまま並べるのではなく、「だから次に何を求めるのか」まで考えておくことが大切だと思います。
まとめ|公務員の転職理由は「価値観がどう変わったか」で考えると話しやすい
私は民間企業への出向を経験したことで、仕事に対する価値観が大きく変わりました。
そして自治体に帰任したとき、それまで当たり前だと思っていた仕事の進め方に違和感を持つようになりました。
転職を考えた背景には、この価値観のズレがありました。
ただし、企業の面接では自治体への不満をそのまま話すことはしませんでした。
面接では、
- これまでどのような経験をしてきたのか
- その経験によって自分の価値観がどう変わったのか
- これからどのような仕事をしたいのか
という順番で説明していました。
本音を隠して、きれいな転職理由を作る必要はないと思います。
大切なのは、本音の中から「次に何をしたいのか」を見つけることです。
私自身も、自治体への不満を掘り下げていった結果、「もっと効率的に働きたい」「新しいことに挑戦したい」「デジタル分野を軸にキャリアを築きたい」という自分の希望が見えてきました。
公務員から民間企業への転職を考えている方は、まず「なぜ辞めたいのか」を本音で書き出してみるといいと思います。
そのうえで、「では次の職場では何をしたいのか」に置き換えてみてください。
それが、自分自身も納得できる転職理由を作る一番の近道だと思います。


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