公務員から民間企業への転職を考えていた頃、私はかなり不安でした。
特に心配だったのは、次の3つです。
- 公務員の経験が転職市場で評価されないのではないか
- 民間企業で自分が通用しないのではないか
- 転職によって地元を離れ、人生設計そのものが変わるのではないか
実際に30代で自治体を辞め、民間企業へ転職してみると、心配しすぎていたこともありました。
一方で、転職前には想像できなかった苦労もありました。
この記事では、自治体から民間企業へ転職した私が、「転職前に知っておきたかったこと」を実体験から書いていきます。
先に言っておくと、私は誰にでも公務員からの転職を勧めたいわけではありません。
公務員を続けた方が幸せな人もたくさんいると思っています。
公務員を辞めようか迷っている30代の方に、一つの実例として読んでもらえればと思います。
公務員の経験は民間で評価されるのか不安だった
転職前に大きかったのが、「自分には民間企業で評価されるスキルがあるのか」という不安です。
自治体で長く働けば、自治体の中で仕事をする能力は身についていきます。
議会対応、予算要求、行政文書の作成、庁内調整。
どれも自治体では必要な仕事です。
ただ、求人票を見ても「議会対応経験者募集」「予算要求経験者歓迎」と書かれている求人はほとんどありません。
長く働いて身につけたものが、自治体の外へ出た瞬間に評価されなくなるのではないか。
そこが怖かったです。

自治体の中では普通に仕事ができていても、「外に出たら自分には何が残るんだろう」と不安でした。
仕事だけでなく、住む場所まで変わるのが怖かった
もう一つ大きかったのが、勤務地の問題です。
私はできれば地元に残りたいと思っていました。
しかし、公務員を辞めたうえで同じくらいの給与水準を維持しようとすると、地元では選択肢が限られます。
民間企業へ転職するなら、首都圏へ引っ越すことも考えなければなりませんでした。
転職は、単に職場を変えるだけではありません。
住む場所が変わります。
家族や友人との距離も変わります。
休日の過ごし方も変わります。
私にとっては、仕事以上に「これからどこで、どんな生活をするのか」という問題でもありました。
そのため、転職するかどうかは数年間悩みました。
最終的には、民間企業への出向から自治体へ戻った後、それまで気にならなかった自治体の価値観や働き方とのズレを強く感じるようになりました。
「このままここで働き続けるのは難しいかもしれない」
そう感じたことが、転職へ踏み切る大きなきっかけでした。
「民間企業の人についていけない」という心配はしすぎだった
転職前には、「民間企業の人はすごく優秀で、自分だけついていけないのではないか」という不安もありました。
私は転職して、プライム上場企業で働くことになりました。
入社するまでは、かなり身構えていました。
ところが実際に働いてみると、少なくとも私の経験では、「民間企業の人は公務員より圧倒的に頭がいい」ということはありませんでした。
むしろ、地頭や学歴という意味では、自治体にも非常に優秀な人がたくさんいたと改めて感じました。

入社前は「周りが全員ものすごく優秀だったらどうしよう」と思っていました。実際には、そこまで身構える必要はありませんでした。
ただし、求められる「頭の使い方」はかなり違った
とはいえ、「民間でも簡単に通用した」という話ではありません。
むしろ私が苦労したのは、自治体と民間企業で求められる頭の使い方が違うことでした。
民間企業では、スピードを求められます。
成果も求められます。
数字で説明する場面も増えました。
限られた時間で情報をまとめ、相手に伝え、次の行動につなげる。
自治体で身につけた仕事の進め方を、そのまま持っていけばうまくいくわけではありません。
私自身、この違いには現在も苦労しています。
今なら、「民間企業で通用するか」という不安に対して、こう答えます。
頭の良し悪しを必要以上に心配する必要はない。ただし、仕事の進め方や評価されるポイントへの適応は必要です。
公務員時代のコミュニケーション経験は意外と役立った
一方で、公務員時代の経験がそのまま役立った部分もあります。
その一つが、コミュニケーションです。
私は自治体で、さまざまな立場の人と関わる仕事を経験しました。
例えば生活保護のケースワーカーでは、相手の話を聞きながら、時には難しいことも説明しなければなりません。
庁内外の調整や折衝も数多く経験しました。
こうした経験は、思っていた以上に民間企業でも役に立っています。
転職活動の面接でも、コミュニケーション能力を評価してもらいました。
自分では特別コミュニケーション能力が高いと思ったことはありません。
「勘違いでも、そう思ってもらえてよかったな」と思っています(笑)。
ただ、学生時代の自分と比べれば、公務員として働く中で人と話す力が身についたのは間違いありません。
中途入社後も知らない人ばかりでしたが、比較的早くランチに行く仲間ができ、職場に溶け込むことができました。

メールやチャット、WEB会議が増えても、結局は人対人です。普段の人間関係のおかげで仕事が進みやすくなる場面は今でもあります。
逆に、公務員で身につけてもそのままでは使いにくかったこと
もちろん、公務員経験のすべてが民間企業で評価されるわけではありません。
私の場合、自治体で身につけた文書作成能力を使う場面は大きく減りました。
自治体ではWordを使って公的な文書を作ることが多く、「てにをは」まで細かく指導されることもありました。
一方、今の仕事ではWordで正式な文書を書く場面自体がほとんどありません。
情報をまとめるときも、PowerPointを使うことの方がずっと多いです。
多少文章が粗くても、相手に意味が伝わり、仕事が進めば問題にならないことも多くあります。
今なら文章の下書きはAIでも作れます。
自治体で長い時間をかけて磨いた能力が、そのまま転職市場で高く評価されるとは限らないと感じました。
議会対応や予算要求も、転職先によって価値が変わる
議会対応や予算要求も同じです。
自治体の中では重要な仕事ですが、一般的な民間企業で直接使う場面は多くありません。
自治体独自の仕事だけを極めても、それだけでは持ち運べるスキルになりにくいと感じます。
ただし、これは「公務員経験に価値がない」という話ではありません。
例えば、自治体向けの営業や公共分野の仕事なら状況は変わります。
自治体の意思決定がどう進むのか。
予算がどう決まるのか。
年度という区切りがどれほど重要なのか。
民間企業で働く多くの人が経験していない世界を知っていることは、それ自体が武器になります。
公務員経験の価値は、「何を経験したか」だけではなく、「どこへ転職するか」によっても変わります。

「自治体で10年以上働きました」だけではなく、「その経験から何ができるようになったのか」まで言葉にすることが大事だと感じました。
公務員だから民間では通用しない、と決めつける必要はない
転職して感じたのは、公務員経験そのものが評価されるわけではないということです。
重要なのは、その仕事を通じて何ができるようになったのかまで分解することです。
- 人との折衝ができる
- 複数の関係者を調整できる
- 複雑な制度を理解して説明できる
- プロジェクトを進められる
- 自治体内部の事情を理解している
こうした形に置き換えて初めて、自治体の外でも使える経験になります。
転職前の自分に伝えるなら、
「公務員だから民間では通用しない」と、最初から決めつけなくていい。
そう言いたいです。
ただし、ここで一つ誤算がありました。
私の場合、転職活動そのものは思っていたほど大変ではありませんでした。
本当に大変だったのは、内定をもらった後です。
後編では、30代で民間企業へ転職して感じた「転職後の現実」と、公務員を辞めた判断を今どう考えているのかを書きます。


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