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地方自治体は20年後どうなる?元自治体職員が考える未来

地方自治体は20年後どうなる?元自治体職員が考える未来 キャリア・転職
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地方自治体は、10年後、20年後にどうなっているのでしょうか。

人口減少によって税収が減り、自治体が次々に財政破綻する。

そんな未来を想像する人もいるかもしれません。

しかし、国や総務省などのデータを調べると、私は少し違った未来になると考えています。

結論から言えば、これからの自治体で大きな問題になりそうなのは「財政破綻」そのものよりも、人手不足によって現在と同じ行政サービスを維持することが難しくなることです。

そして自治体で働く職員にとっては、職員数を十分に確保できない一方で仕事そのものは簡単には減らず、1人当たりの仕事の密度が上がっていく可能性があります。

私は自治体で長く働いた後、民間企業にも転職しました。

自治体にいたときにも、ペーパーレス化やWEB会議など、仕事を効率化するための仕組みが少しずつ導入されていました。

効率化自体は必要です。

ただ、実際に働いてみると「DXが進めば職員の仕事が楽になる」と単純には言えないと感じています。

この記事では、国立社会保障・人口問題研究所や総務省などのデータをもとに、2035年ごろ、2045年ごろの地方自治体がどうなっているのかを考えてみます。

あわせて、夕張市のような財政再生団体の現状や、「これから財政破綻する自治体は出てくるのか」についても取り上げます。

※本記事の制度・統計は2026年10月時点で確認しています。将来についての記述には、公的な人口推計などをもとにした筆者自身の予測を含みます。

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20年後、日本の人口は約1,700万人減る

まず避けて通れないのが人口減少です。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、日本の人口は今後も減少していくと予測されています。

年 総人口 15~64歳人口
2020年 約1億2,615万人 約7,509万人
2035年 約1億1,664万人 約6,722万人
2045年 約1億880万人 約5,832万人
2050年 約1億469万人 約5,540万人

2020年から2045年までの25年間で、総人口は約1,735万人減ります。

さらに重要なのが15~64歳人口です。

2020年の約7,509万人から、2045年には約5,832万人まで減少します。

約22%の減少です。

自治体職員を含め、日本全体で「働く人」を確保することが今より難しくなることが分かります。

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」

ダイ
ダイ

「人口が減るなら自治体の仕事も減るのでは?」と思うかもしれません。ただ、実際に自治体で働いた感覚では、それほど単純ではありません。

人口減少の影響は全国一律ではない

さらに問題なのは、人口減少が全国一律に進むわけではないことです。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2050年の人口が2020年より少なくなる市区町村は1,651団体です。

全市区町村の95.5%に当たります。

さらに、2020年と比較して人口が30%以上減少する市区町村は1,046団体。

全体の約6割です。

人口が2020年の半分未満になると推計されている市区町村も341団体あります。

つまり、20~30年後の地方では「人口が少し減る」というレベルではありません。

住民が3割、4割、場合によっては半分以上減る地域も珍しくなくなります。

当然、自治体の組織も今と同じ形では維持しにくくなります。

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」

地方公務員はピーク時から約47万人減っている

地方公共団体の職員数は、これまでも大きく減ってきました。

全国の地方公共団体の職員数は、1994年には約328万人いました。

2025年4月時点では約281万人です。

約30年間で、およそ47万人減ったことになります。

ただし、ここは注意が必要です。

地方公務員数は長期的には大幅に減っていますが、2016年ごろからは横ばいから微増で推移し、直近では再びわずかに減少しています。

そのため、「これからも過去30年間と同じペースで職員数が減る」と単純に予測することはできません。

私が今後より大きな問題になると考えているのは、行政が意図的に職員を減らすことよりも、必要な職員数を確保したくても、人が集まらないことです。

特に専門職では、その兆候がすでに出ています。

2024年4月時点では、土木技師と建築技師がともに1人もいない市区町村が440団体あります。

全国の約4分の1です。

人口が減るからといって、道路や橋、上下水道が自動的になくなるわけではありません。

住民が減っても、行政サービスやインフラを維持する人は必要です。

これからの自治体では、「職員を何人減らすのか」ではなく、そもそも必要な職員を確保できるのかが大きな問題になると思います。

出典:総務省「令和7年地方公共団体定員管理調査」、国土交通省「国土交通白書2025」

ダイ
ダイ

「職員が足りなくてもAIやシステムで効率化すれば大丈夫」と考える人もいると思います。でも、私はそこにも注意が必要だと思っています。

今の自治体職員は、世間で言われるほど楽ではない

「公務員は仕事が楽」「定時で帰れて安定している」

今でも、そんなイメージを持っている人はいると思います。

しかし、実際に自治体で長く働いた私の感覚では、今の自治体職員は世間で言われているほど楽な仕事ではありません。

むしろ、1人当たりの業務量が増え、以前より仕事が大変になっていると感じていました。

もちろん、部署や自治体によって忙しさは違います。

ただ、仕事を取り巻く環境そのものが昔とは大きく変わっています。

メールの普及で仕事のスピードも上がった

分かりやすいのがメールです。

メールが普及する前と比べれば、情報をやり取りするスピードは圧倒的に速くなりました。

資料を郵送して、相手へ届くまで待つ必要はありません。

メールを送れば、相手にはすぐ届きます。

便利になった一方で、仕事を処理するスピードも速くなりました。

連絡が早くなれば、返事も早く求められます。

1つの仕事が早く終われば、また次の仕事を進めることができます。

つまり、ITによって仕事が効率化されても、その分だけ職員に余裕が生まれるとは限りません。

「AIに仕事を奪われる」ことは本当に怖いのか

生成AIが普及すると、「AIに仕事を奪われる」という話をよく聞きます。

もちろん、自分の仕事そのものがなくなることに不安を感じる人はいるでしょう。

しかし、毎日大量の仕事を抱えている職員の中には、逆に「AIにもっと自分の仕事を奪ってほしい」と思う人も少なくないのではないでしょうか。

AIが議事録を作ってくれる。

通知文書のたたき台を作ってくれる。

大量の資料を要約してくれる。

問い合わせへの回答案を考えてくれる。

こうした仕事をAIが代わりにやってくれれば、その分だけ自分の仕事は減ります。

忙しい職員にとって、それ自体は歓迎すべきことです。

問題は、その後です。

AIが1時間分の仕事を減らしてくれたとして、その1時間が職員の余裕になるのでしょうか。

私は、必ずしもそうはならないと思っています。

空いた時間には、また別の仕事が入ってくる可能性が高いからです。

ダイ
ダイ

忙しいときには「AIに仕事を奪われる」どころか、「もっと私の仕事を奪ってくれ」と思う職員もいるのではないでしょうか。

DXが進んでも自治体職員の仕事が楽になるとは限らない

現在、多くの自治体がDXを進めています。

ペーパーレス化。

WEB会議。

RPA。

生成AI。

電子申請。

場所を選ばずに仕事ができる環境の整備。

こうした仕組みは、これからさらに広がっていくでしょう。

民間企業では、ペーパーレスやWEB会議、クラウドサービスなどを使った働き方がすでに広く取り入れられています。

自治体でも同じような働き方が進めば、「仕事が効率化されて楽になるのではないか」と感じる人もいると思います。

しかし、実際にはそれほど単純ではないかもしれません。

効率化によってなくなるのは、必ずしも「大変な仕事」だけではないからです。

ペーパーレス化で「頭を休められる仕事」もなくなる

例えば、ペーパーレス化です。

以前は会議を開くとなれば、資料を印刷する必要がありました。

参加者の人数分を印刷して、資料を順番に並べて、ホチキスで留めます。

正直に言えば、生産性が高い仕事ではありません。

ペーパーレス化によって、こうした作業がなくなること自体は良いことだと思います。

ただ、職員個人の立場から見ると、別の側面もあります。

資料を印刷したり、ホチキスで留めたりする仕事は、あまり頭を使わなくてもできます。

手を動かしながら、少し頭を休めることもできます。

一方で、制度を調べる。

通知文書を書く。

上司へ説明する。

関係者と調整する。

住民からの問い合わせに対応する。

こうした仕事には判断が必要です。

常に頭を使います。

DXが進んで単純作業がなくなれば、勤務時間の中でこうした負荷の高い仕事が占める割合が増えていきます。

仕事をする時間は同じ8時間でも、8時間の中身がどんどん濃くなっていく。

これが、私が考える「仕事の密度が上がる」ということです。

ダイ
ダイ

ホチキス止めは無駄な仕事だったと思います。でも、こうした単純作業まで全部なくなると、勤務時間のほとんどを頭を使う仕事に充てることになります。

「いつでもどこでも働ける」は、本当に楽になることなのか

もう一つ考えておきたいのが、「場所を選ばずに働ける」という変化です。

テレワークやクラウドサービスが普及すれば、職場にいなくても仕事ができます。

一見すると、とても便利です。

しかし、働く側から見ると良いことばかりとは限りません。

私が自治体で働いていた頃、出張で新幹線に乗っている時間は、基本的には仕事をするのが難しい時間でした。

職場にいないのだから、できない仕事は諦めるしかありません。

ある意味では、移動中は強制的に仕事から離れる時間でもありました。

ところが、いつでもどこでも仕事ができる環境が整えば状況は変わります。

新幹線の中で通知文書を作る。

資料をチェックする。

メールを返す。

通信環境が整っていれば、WEB会議に参加する。

公務員でも、こうした働き方が当たり前になる可能性があります。

これまで「仕事ができなかった時間」が、「仕事ができる時間」に変わるわけです。

もちろん、移動時間を有効活用できるというメリットはあります。

一方で職員個人から見れば、これまで仕事から離れていた時間にも仕事が入り込んできます。

出張のために新幹線へ乗っている2時間。

以前なら仕事ができなかった。

これからは2時間分の事務仕事ができる。

組織から見れば、生産性は上がっています。

では、職員本人は楽になっているのでしょうか。

私は、必ずしもそうとは言えないと思います。

「いつでもどこでも働ける」は、「いつでもどこでも仕事ができてしまう」という意味でもあるからです。

効率化で生まれた時間が「余裕」になるとは限らない

例えば、これまで1時間かかっていた仕事を生成AIによって30分で終えられるようになったとします。

確かに30分の時間が生まれます。

しかし、残りの30分について「仕事が早く終わったので休んでいてください」となる職場は多くないでしょう。

通常は次の仕事をします。

その結果、同じ1時間で処理できる仕事の量が増えます。

さらにペーパーレス化によって単純作業が減り、場所を選ばずに仕事ができるようになれば、勤務時間の中に存在していた「仕事ができない時間」も減っていきます。

これは組織にとっては生産性の向上です。

一方で職員個人から見ると、勤務時間のほとんどを集中して働き続ける状態に近づいていきます。

「業務効率化」と「職員が楽になること」は、同じ意味ではありません。

むしろDXが進めば進むほど、同じ1時間で求められる成果が増え、仕事の密度が高くなる可能性があります。

人口減少によって職員の確保も難しくなれば、この傾向はさらに強まるかもしれません。

ダイ
ダイ

出張中の新幹線でも通知文書を作り、WEB会議に参加する。これを想像してみてください。果たして、これは「仕事が楽になった」と言えるのでしょうか。

仕事の密度が上がれば、職場の余裕もなくなる

さらに気になるのが、自治体職員のメンタルヘルスです。

地方公務員安全衛生推進協会の調査によると、2024年度に「精神及び行動の障害」で長期病休となった地方公務員は、職員10万人当たり2,372.9人でした。

10年前の約1.9倍です。

また、長期病休者全体のうち、「精神及び行動の障害」が占める割合は67.4%となっています。

もちろん、この増加を「DXが進んだから」と結論づけることはできません。

メンタルヘルス不調には、人間関係、職場環境、家庭環境、仕事の内容などさまざまな要因があります。

ただし、人員に余裕がなくなった職場では、1人が休んだときの影響が大きくなります。

例えば、10人で行っていた仕事を9人で回す。

その分、残った職員の仕事が増えます。

さらに別の職員が休めば、今度は8人で同じ仕事を回さなければなりません。

人員に余裕がない職場ほど、1人の離脱が残された職員に与える影響は大きくなります。

仕事の負荷が高くなる。

休職者が出る。

残された職員の仕事が増える。

さらに職場の余裕がなくなる。

こうした悪循環が起こる可能性もあります。

今後の自治体では、単純に「少ない人数で同じ仕事をこなす」ことだけを考えるのではなく、職員が継続して働ける余裕をどう残すかも重要になると思います。

出典:地方公務員安全衛生推進協会「令和7年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会報告書」

ダイ
ダイ

人が足りないからといって、残った職員がずっと100%の力で働き続けることを前提にすると、どこかで無理が出ると思います。

人口が減っても自治体の財政規模は簡単には小さくならない

次に自治体の財政を見てみます。

人口が減れば、自治体の予算も同じ割合で小さくなっていくと思うかもしれません。

しかし、現状はそう単純ではありません。

総務省が公表した2025年度の市町村普通会計決算速報では、全国の市町村の歳入は約74.5兆円。

歳出は約72.1兆円でした。

前年度と比べると、歳入は約3.1兆円、歳出は約2.9兆円増えています。

人口減少が進んでいても、自治体の財政規模がそのまま小さくなっているわけではありません。

歳出が増えた主な要因として、総務省は物価高騰などによる物件費の増加、学校や消防施設の更新などによる普通建設事業費の増加、児童手当制度の拡充などによる扶助費の増加を挙げています。

ここから分かるのは、人口が減ったからといって自治体の支出も同じ割合で減るわけではないということです。

住民が減っても道路や橋は残る

特に地方では、この問題が深刻になる可能性があります。

住民が30%減ったからといって、道路を30%なくすことはできません。

橋も同じです。

上下水道もあります。

学校、庁舎、公民館、消防施設などもあります。

人口が少ない地域では、少ない住民で広い面積のインフラを維持しなければならないケースがあります。

さらに高齢化に伴う福祉関係の行政需要もあります。

そのため今後は、「自治体のお金が突然なくなる」というより、限られた財源の中で何を維持し、何をやめるのかを選ばなければならない場面が増えるのではないでしょうか。

2025年度の市町村の経常収支比率は全国で93.3%です。

経常収支比率は、人件費や扶助費、公債費など毎年継続して必要になる支出が、経常的な一般財源に対してどれほどの割合を占めているかを見る指標です。

数字が高くなるほど、新しい事業などに自由に使える財源の余裕は小さくなります。

出典:総務省「令和7年度市町村普通会計決算の概要(速報)」

現在「財政破綻」している自治体はあるのか

自治体の財政を考えるときによく名前が挙がるのが北海道夕張市です。

ただし、正確には「財政破綻自治体」という法律上の区分があるわけではありません。

地方公共団体財政健全化法では、財政状況が悪化した場合、大きく次の段階があります。

  • 早期健全化団体
  • 財政再生団体

自治体の財政状況を判断するために、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率などが使われます。

一定の基準を超えると、財政健全化計画などの策定が必要になります。

さらに深刻な財政再生基準を超えると、財政再生団体として財政再建を進めることになります。

2025年度決算に基づく総務省の速報では、財政再生基準以上となっている自治体は夕張市です。

つまり、人口減少が全国で進んでいるからといって、現在、日本中の自治体が夕張市のような状態になっているわけではありません。

ただし、夕張市の事例から分かるのは、一度自治体の財政が極端に悪化すると、財政再建には非常に長い時間がかかるということです。

出典:総務省「令和7年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(速報)」

ダイ
ダイ

「財政が厳しい自治体=すぐ破綻する自治体」ではありません。破綻する前に、施設の統廃合や事業の見直しなどで支出を抑えていく可能性の方が高いと思います。

これから財政破綻しそうな自治体はあるのか

では、今後夕張市のようになる自治体はあるのでしょうか。

ここは慎重に考える必要があります。

2025年度の市町村普通会計決算では、全国合計の実質収支は約1兆7,798億円の黒字でした。

実質収支が赤字となった団体は1団体です。

現在の数字だけを見れば、日本中の自治体が次々と財政再生団体になる状況ではありません。

そのため、特定の自治体について「次に財政破綻する自治体」と断定することはできません。

「財政破綻しそうな自治体ランキング」のように順位を付けることも、私は適切ではないと思っています。

ただし、自治体ごとの財政状況には大きな差があります。

自治体の財政を見る場合は、単純な借金額だけではなく、次のような指標を総合的に見る必要があります。

  • 実質赤字比率
  • 連結実質赤字比率
  • 実質公債費比率
  • 将来負担比率
  • 経常収支比率
  • 財政調整基金の残高
  • 人口減少率
  • 生産年齢人口の減少率

また、財政力指数が低いからといって、その自治体が直ちに財政破綻するわけでもありません。

日本には地方交付税など、自治体間の財源格差を調整する仕組みがあります。

そのため、これから多くの自治体で起こる可能性が高いのは、「ある日突然自治体が破綻する」ことよりも、財政状況に合わせて行政サービスや公共施設を少しずつ見直していくことではないでしょうか。

10年後、20年後の地方自治体はどうなるのか

ここからは、これまで紹介したデータと自治体で働いた経験をもとに、私なりに将来を予測してみます。

1.自治体がなくなるより、行政サービスの共同化が進む

人口が減ったからといって、自治体そのものがすぐになくなるとは考えにくいです。

その前に進むのは、業務の共同化や広域化ではないでしょうか。

システムを自治体ごとに持つのではなく共通化する。

専門職を複数の自治体で確保する。

公共施設を統廃合する。

一部の業務を民間へ委託する。

こうした動きが今以上に増えていくと予想します。

2.「お金がない」より「人がいない」が深刻になる

自治体の財政が厳しくなる地域は出てくるでしょう。

ただ、私は財政以上に人材不足が大きな問題になる可能性があると考えています。

2045年には、15~64歳人口が2020年より約22%減少する見込みです。

自治体だけが、この人手不足から逃れることはできません。

自治体も民間企業などと限られた働き手を取り合うことになります。

特に土木、建築、IT、福祉などの専門人材を小規模自治体が単独で確保することは、現在以上に難しくなるでしょう。

3.人口が減っても自治体予算は同じ割合では減らない

人口が減れば、地方税などの税収には下押し圧力がかかります。

一方で、社会保障、インフラ更新、防災など、簡単には減らせない支出があります。

そのため、自治体の財政規模そのものが人口と同じ割合で小さくなるとは限りません。

むしろ重要なのは、予算総額ではなく自治体が自由に使える財源がどれだけ残るかだと思います。

4.DXとAIの導入はさらに進む

職員を十分に確保できないのであれば、DXを進める必要があります。

生成AIによる文書作成。

問い合わせ対応の自動化。

申請手続きのオンライン化。

会議録の自動作成。

データ入力や定型処理の自動化。

10年後には、現在職員が手作業で行っている事務のかなりの部分が自動化されていても不思議ではありません。

私は、こうした効率化自体は必要だと思っています。

しかし、それは必ずしも職員が暇になることを意味しません。

5.自治体職員は「労働時間」より「仕事の密度」が問題になる

私はこれが、職員個人にとって一番大きな変化になるのではないかと思っています。

単純作業はAIやシステムが行います。

人間に残るのは、判断、交渉、調整、企画、住民対応などです。

どれも精神的な負荷が比較的大きい仕事です。

さらに職員数に余裕がなくなれば、1人が担当する範囲も広くなります。

メールやチャットによって情報伝達は速くなります。

生成AIによって文書作成も速くなります。

ペーパーレス化によって単純作業はなくなります。

そして、場所を選ばず仕事ができるようになります。

一つひとつを見ると便利な変化です。

しかし、それらがすべて組み合わさると、勤務時間の中から「何もできない時間」や「単純な仕事をする時間」が少しずつ消えていきます。

その結果、残業時間がそれほど増えていなくても、仕事がきつくなる可能性があります。

同じ8時間でも、8時間の中身が今より濃くなる。

これが、私がこれからの自治体職員に起こるのではないかと考えている変化です。

ダイ
ダイ

公務員の仕事がなくなるというより、「少ない人数で、より密度の高い仕事をする」方向へ進む可能性が高いと思っています。

「公務員だから安泰」と「仕事が楽」は別の話

公務員には、民間企業と比べて雇用が安定しているというメリットがあります。

今後も、そのメリット自体が急になくなるとは考えていません。

ただし、雇用が安定していることと、仕事の負荷が小さいことは別問題です。

私は自治体で長く働いたからこそ、今の自治体職員が世間で言われるほど楽な仕事ではないことを実感しています。

そして人手不足が進めば、自治体職員1人当たりに求められる役割はさらに大きくなる可能性があります。

これから公務員を目指す人や、現在自治体で働いている人は、「自治体は倒産しないから安心」という点だけで将来を考えない方がいいと思います。

自分の自治体の人口はどれくらい減るのか。

必要な職員を確保できているのか。

どんな行政サービスを今後も維持するのか。

DXによって仕事のやり方はどう変わるのか。

こうした点も見ておく必要があります。

まとめ:自治体の危機は「破綻」より静かに進むかもしれない

地方自治体の将来について調べてみると、「人口減少によって自治体が次々に財政破綻する」という単純な未来ではなさそうです。

2025年度決算の時点でも、全国の市町村全体では実質収支は黒字です。

財政再生基準以上となっている自治体も、夕張市だけです。

しかし、だから安心というわけではありません。

人口減少は確実に進みます。

特に、生産年齢人口は大きく減ります。

その一方で、道路、橋、上下水道、福祉、防災など、自治体が担わなければならない仕事は人口と同じ割合では減りません。

そこでAIやITによる効率化が進みます。

それでも人手が足りなければ、行政サービスの広域化、公共施設の統廃合、民間委託なども進むでしょう。

そして職員個人にとっては、単純作業が減ることで、勤務時間の中で判断や調整などに使う時間が増えていく可能性があります。

「いつでもどこでも働ける」という便利な環境も、裏を返せば「いつでもどこでも仕事ができてしまう」環境です。

これから自治体が直面するのは、突然訪れる「財政破綻」というより、少ない人と限られたお金で行政サービスを維持し続けなければならないという、ゆっくりと進む問題なのではないでしょうか。

自治体で実際に働いた経験があるからこそ、私は財政の数字だけではなく、そこで働く職員一人ひとりの負荷まで含めて、この問題を考える必要があると思っています。


主な参考資料

  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
  • 総務省「令和7年地方公共団体定員管理調査」
  • 総務省「自治体戦略2040構想研究会」
  • 国土交通省「国土交通白書2025」
  • 総務省「令和7年度市町村普通会計決算の概要(速報)」
  • 総務省「令和7年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(速報)」
  • 地方公務員安全衛生推進協会「令和7年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会報告書」
  • 夕張市「財政再生計画」

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